【イベントレポート】RadworksのCypherpunksぶりがアツい。プロダクト群に宿る思想。Ethereum Meetup Tokyo vol.18
OSSエコシステムへの還元、Gitの思想を叶えるもう一つのアプローチ、そして安心してWebアプリを使うためのネイティブアプリへ
こんにちは、CentrumのSeiyaです。昨日、 Fracton Ventures が主催する Ethereum Meetup Tokyo vol.18 に co-host したのですが、想像以上に興奮してしまったので、この熱をみなさんにも共有するためにレポーティングしました。
Fracton Venturesにより毎月開催されている Ethereum Meetup Tokyo、その18回目が10/6に開催された。毎回さまざまなゲストやプロジェクトが招待され、参加者とその場限りの濃密なトークが展開される。
今回のゲストは Radworks 、彼らこそ Cypherpunk 思想やそこに息づく哲学を体現しているチームの一つだ。
彼らは普段ベルリンを拠点に活動しているが、現在 ”Rad New World” と題して、さまざまな国を回っている。
この振り返りでは、主に彼らが開発している3つのプロダクト「DRIPS」「Radicle」「Radworks App」について話す。
DRIPS - 依存関係を辿ってすべての開発者へ
DRIPSは、特定のプロダクトや開発者だけではなく、彼らを支えているOSSやその開発者を支援するためのプラットフォームだ。
ITエンジニアにはもはや当然の概念だが、現在使われている主要なライブラリのほとんどがOSSであり、オープンな体制で更新・管理されている。この中には、個人の趣味で運用されているものや資金不足により更新が途絶えるものも多くある。
しかし、今現在実際に開発・運用されいてるプロダクトの多くは、そんなOSSにどこからしら依存していると言えるだろう。誰もが使う、とても大きなメジャーOSSの一部が、過去に個人が趣味で作っていたコンポーネントに依存している、というのは少なくない話だ。
DRIPSはそんなOSSエコシステムを取り巻く問題に焦点を当てる。
DRIPSは基本的にfundingプラットフォームであり、それぞれが特定のプロジェクトに金銭的な支援を送ることができる。(one-time, streaming)
その上でDRIPSでは、自身が得た支援を自身が依存しているOSSや開発者ごとに割合で割り振ることができる。
↓の例は wevm/wagmi(Ethereum関連のWeb開発の主要ライブラリの一つ)にDRIPSを通して支援した際に、割り振られる対象が示されている。
この機能は本質的に、集まってきたトレジャリーの分配率を決めるものなので、Grantの支払いなどに使うこともできる。実際にENSやOctant、Funding the Commonsなどがそのように利用していることがアプリから確認できる。
依存の自動検出や分配率の決定方法など、より改善していきたい部分は今後もあるようだが、これは今までフリーライドされてきたすべてのOSSプロジェクトに光を当てる行為であり、とても意義深く思う。
ぜひコントリビュートさせて欲しいところだ。
https://github.com/drips-network
Radicle - Gitの思想を叶えるもう一つの方法
Gitと聞いてGitHubの名前を思い浮かべる人は多いだろう。Radicleは、GitHubとは違った方法で、Gitの思想を叶えるための仕組みだ。
Radicleは、オープンソースでp2pでLocal-Firstな、Git repo管理のためのプロダクトだ。分散型のGitHubと比喩されることが多く、実際にそのような機能を持っている。p2pネットワークで実装されているため、中央のサーバが存在せず、Radicle独自のp2pネットワークでrepoがホストされている点がGitHubと異なる。
Gitは本来的にはバージョン管理と共同実装のために存在するプロトコルだ。この上に様々な便利機能を一気通貫で実装したのがGitHubだが、その代わりに中央集権的な運用になっている。
GitHubに比べ、Radicleは提供されている機能こそ比べ少ないが、Local-Firstであるため、すべてのデータが自分の手元に集まる。そのためノードを起動していれば、GitHubが提供していないような機能を自前で実装することも可能だ。(これがOSSでありp2pであることの利点だ)
また、RadicleはIPFSなどの外部ストレージに依存しておらず、独自のp2pネットワークで実現している。ネットワークレイヤーは Gossip Protocol で動作し、必要なnodeが情報を持っていそうなnodeに Git fetch をかけることでp2pネットワークが成立している。

このコンセプトは、Gitのそれぞれの開発者がコードを管理し、統合・分岐を進めていくという発想に、綺麗にアラインしているように思う。GitHubのような集中したリモートリポジトリというコンセプトも当然アリだが、こちらの方がより本来的なGitの在り方に近いように筆者は思う。
ぜひ気になった人は一度触ってみて欲しいし、seeder nodeも建ててみると面白いかもしれない。
https://app.radicle.xyz/nodes/seed.radicle.xyz
Radworks App - 安心してWebアプリを使うために
2025年2月のBybitハッキング事件を踏まえ、フロントエンドアプリケーションやその表示・動作の真正性が問われるようになってきた。そんな時代に必要なアプリケーションが、このRadworks Appだ。
Radworks App は、先の二つとはまた違った切り口で、Local-Firstを体現する。
これはUniswapやSafe、その他のすべてのWebアプリケーションをコードやリリース、サプライチェーンレベルで検証し、そのホワイトリストを提供すると共に、そのアプリケーションの実行環境として動作する。
基本的には、Webアプリケーションはブラウザが実行環境だ。ブラウザはWebアプリケーションのコードを解釈し、画面を描画し、処理を実行する。
現代において、もはやブラウザはインターネットサーフィンや動画視聴するためだけのものではなく、ウォレットやパスワード管理など、高度にセキュリティを要求されるような実行基盤となっている。
Radworks App は、ここを完全に置き換える。ブラウザ経由で見る検索エンジンのあやふやな表示や、あっているかどうか自信がないURLを直接開く必要もない。なぜなら、Radworks App に登録され検証されたアプリケーションを、ブラウザを開くことなく、そのまま実行できるようになるからだ。
この Radworks App は現在、Waitlist 登録期間中だ。曰く、まだリリースはされておらず、絶賛開発中とのことだった。
公式サイトから Waitlist に登録できるので、ぜひ登録しておこう。
今回のイベントは、全体を通して Cypherpunk, Local-First, p2p, Open Source のワードが至る所で飛び交い続けていたことが、とても印象的だった。
これからも彼らの動向には注目していたいし、自分自身も思想をともにする人間として、この文脈に貢献していきたいと強く思った。
余談ではあるが、この記事を読んで少しでも面白そうと思った人へ。
Centrumでは現在、 Centrum Haus というCypherpunkのためのシェアハウスを運営中だ。まだまだ余裕があるので、興味のある人はぜひ連絡して欲しい。
X (@seiya_oht) のDMか、 email: house@centrum.studio まで。









